牛乳は噛んで飲む

こっそり転職活動を行うグラフィックデザイナーのなんてことない日常。

婚活パーティ未遂とはじめてのアイリッシュパブ

その日は友人Kちゃんと二人で“婚活パーティー”デビューをするはずでした。
「このままじゃいけない。何かしなければ。」という目に見えない危機感に背中を押され、一週間前に友人Kちゃんと婚活パーティーを予約しました。
友人Kちゃんは専門学校の同級生。同級生ですが、わたしは大学を卒業してから入学し、Kちゃんは高校卒業後に入学したので年齢は4歳離れています。
わたしからしたら、そんなに結婚を焦らなくても……と思うのですが、Kちゃんは学生時代から結婚願望が強く、今の何もない状態に不安を感じている様子。
Kちゃんの職場は社員数が少ないうえに既婚者ばかりなので出会いがなく、高校時代の友人もほとんど結婚してしまい出会いが見込めないらしい。
もうこうなったら最後の手段で婚活パーティーという荒波に飛び込んでみることにしました。

婚活パーティー当日。待ち合わせ場所に来たKちゃんは明らかに緊張していました。
もともとKちゃんは人見知りをする性格なので、初対面の人と会話をするのが苦手です。
そんな苦手なことがこれから起こると分かっているのだから、緊張するのも無理はないと思い、少しでも緊張が緩和されればとパーティー会場までの道のりを他愛もない話をしながら進みました。
「どんな人が集まっているんだろう……」とKちゃんのつぶやきを聞きながら会場のあるビルに入ると電話が鳴りました。

「もしもしぃ〜森田さんですかぁ?」
語尾を伸ばす話し方の女性から電話がかかってきた。
「あのぉ、本日ご予約いただいた婚活パーティーの件でお電話させていただいたのですがぁ〜〜」

「本日グループで予約されていた男性の方がグループ全員キャンセルされてぇ〜〜女性の参加人数が20数名に対し、男性の参加者が10数名になってしまったんですよぉ〜〜」

えっ!?えっ!?

「本日参加されますかぁ?参加されても参加費は当初お伝えしていた通りになるんですがぁ、本日キャンセルされてもキャンセル料はお支払いいただかなくてもけっこうですぅ〜〜〜」
当たり前でしょ。わざわざこんな電話かけてきてキャンセル料取られるなんて思ってないよ。
もう受付時間になっていて、会場のすぐそこまで来ているのでKちゃんも自分も参加にするかキャンセルにするか迷っている横を「24階か……急がないと!!」と言いながら男性が小走りで通っていきました。
24階。それは婚活パーティー会場のあるフロア。
その男性を見ると、タイトでもゆったりでもない謎のサイズ感のチノパンにボーダーのポロシャツを着ていました。見た感じ三十代後半ぐらいだろうか。
その男性の背中をみると“Night Party! Yeah!”という文字と骸骨の刺繍がされていた。そして手に持っている真っ黒のトートバッグには可愛い女の子の写真のバッジが5つ。
Kちゃんを見るとうつろな目で言いました。「キャンセルしよう。」

語尾を伸ばす喋り方の女性にキャンセルする旨を伝え、逃げるようにしてビルから出ました。
すると一気にKちゃんの緊張の糸がブチンと切れてしまったらしく「おなかがすいた。」を連呼しだした。何かを振り切るようにただひたすら「おなかがすいた。」を繰り返す。
ゆっくりいろいろ喋りたいので、長いができて静かすぎないお店がないかと探したところ、知人からおしえてもらったアイリッシュパブのお店を思い出しました。
そのお店には行ったことがなく知人の話でしか分からないのですが、席数が多いパプでいつ行ってもだいたい人が多いということだったので、お店に行ってみました。

お店の扉を開けると大勢の人が。
席がないのかと思っていたのですが、店員さんから禁煙席なら案内できると言われたので席につくことができました。よかった。
お店の奥のにある壁際のテーブル席だったのですが、前後のテーブルには男性二人組、隣のテーブルには男性三人組と周囲は男性ばかり。落ち着かない。
でもせっかく席に座れたので、お酒と食事を注文しました。
注文したモヒートはミントがきいているし、フィッシュ&チップスはさくさくほくほくしているしで酒と食事が進み、Kちゃんとの会話もはずむはずむ。

婚活パーティーの当日受付時間にキャンセルの電話ってどうなってるんだろね。
あのビルの入り口で見た男の人たぶん婚活パーティーに行く人だよね。どんなこと話すんだろ。
そもそも婚活パーティーで出会いあるのかな。
職場でも学生時代の友達でも出会いなかったら、どこで知り合えばいいんだろう。
周りの人に誰か紹介してって言ってるのに全然紹介ない。
やっぱりブスは人生損だな。
男性のブスは生きていけるけど、女性のブスはほんと生きづらい。
顔面ブスだけど性格もブス。でもそんな自分を好きになってくれる人と出会いたい。
どこでそんな人と出会うんだろ……
街中のカップルにどこで知り合ったか調査したいね。
『学生時代から付き合ってる』って回答が一番しょうもない。
せめて自分の収入がもっと高ければな。
自分の収入がそこそこあって、ローン組めるちゃんとした会社だったら一人で生きていけるのに。でも一生一人は嫌!家族がほしい!

などなど。
聞いても誰もなにも得をしない会話のキャッチボールを続けていました。
そしてふと周りを見渡すと、前後テーブル席も、隣のテーブル席も店内でナンパしてきた女の子が座っていて、男女が楽しそうにしゃべっている姿が……


【結論】
どんなにナンパが多いで有名な飲み屋でも、顔面も雰囲気もブスな女はナンパされない。

ちなみにKちゃんは自分のことをブスと言いきっているけれど、正直かわいい。
度を越えた人見知りな性格が原因なだけで、もう少し人とコミュニケーションをとれるようになればすぐに彼氏ができると思います。
本当にかわいいのだけれど、人見知りを発動したKちゃんは宇宙空間をさまようカーズさまにそっくりです。

 

ジョジョの奇妙な冒険 カーズの考えるのをやめた文鎮

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これに似てるって悪口?でもカーズ様だし……